婚外恋愛に似たもの/宮木あや子

 3億年ぶりに小説を読んだので感想を書きます。てかこのはてなダイアリーに本のカテゴリが存在してたことがまず吃驚だし、前に書いたのが大堀さんの本とかだったからもっと吃驚だよ。
 読んだ本はこれ。

婚外恋愛に似たもの

婚外恋愛に似たもの

なんでこの本を読もうかと思ったかというと、ツイッターこれが流れてきて、面白そうだなと思ったからです。とりあえず帯に書いてある小説の紹介を引用。

容姿も、仕事も、家族も、生い立ちも、社会における立ち位置もバラバラの5人の女。彼女らの共通項は、35歳。夫あり。そして男性アイドルユニット「スノーホワイツ」の熱狂的ファンであること。彼女たちの愛は、夫ではなくステージで輝く若く美しい「恋人」に遍く注がれる。哀れでも、歪んでいても、これはまぎれも無く、恋。だからこんなに愛おしい―。“最凶恋愛小説”。

なんかいろいろ書いてますが、一言で言うとジャニヲタを題材にした小説です。小説中、ジャニーズ事務所にあたるのがディセンバーズ、ジャニーズJrがノベンバーズ。上に書いてるスノーホワイツっていうのは、ノベンバーズに所属するメンバーによるユニット。デビュー前のJrのユニットというところでしょうか。ちなみにKGB64(川越橋ロクヨン)なる女性アイドルグループも出てくるのですが、なんか枕で仕事を取ってきてるらしいので、僕が知ってる某アイドルとはちょっと違うみたいですね(震え声)。
 自分も読む前は上の文章読んだ程度で、具体的にどんな内容なのかは知らずに読み始めたんだけど、読み終わってみると、意外とこれはジャニヲタを描くことが主題の小説ではないのかもしれないなと思った。それよりもむしろ、ここに描かれているのは、女のヒエラルキー。帯に「5人の女」と書いてるけど、この5人というのが、最高の美人と、上から3番目の美人と、普通と、下から3番目のブスと、最低のブス。しかも容姿と頭の良さが一致してて、美人は秀才だしブスはバカ。そんな普通に生活してたら一生出会わないような5人を串刺しにするための道具がスノーホワイツであり、それぞれの人生の鬱屈した部分を炙り出すための道具がそれぞれの推し、いやジャニーズだったら担当か、だったんだなと。これは自分に置き換えてみてもやっぱりそうで、アイドル好きになってなかったら一生出会わなかっただろう人たちとたくさん出会ってて。なんならアイドルそのものよりも自分の人生に影響を与えてるかもしれないし、そこで出会った人にしか言えないこととか山ほどあるわけですよ。まあ自分の場合はそこにツイッターが付加されてることがすごく大きくて、この小説では一人を除いてネットじゃなくて現実の偶然が重なって出会ってるから、そこはちょっとリアリティがなかったりするんだけど。それでもやっぱり年齢も職業もバラバラの人間がこうして出会うことができるっていうのが、アイドルが好きな人たちの人生をもっと楽しくする大きな理由のひとつだと思うので、そこが描かれていたのはすごく共感できたし読んでて楽しかったです。
 とは言っても、やっぱりジャニヲタの文化とか習性みたいなのが細かく再現されてるので、それ読んでるだけでもすごく面白いです。表紙にも描かれてるうちわがジャニヲタにとって如何に大事かとか、出待ち入り待ちで古参のヲタがファンレター集めて渡す話とか。自分がジャニヲタだったらこれもっと面白かったんだろうな、と。だれか女性アイドルでこういう小説書く人いないんですかね。
 それでは最後に、いちばん共感した一節を引用して、この文章を締めたいと思います。

きっとリアルな人生が素晴らしくキラキラしたものだったら、私はディセンバーズのタレントに恋などしなかっただろう。

まあ結局のところこれに尽きるよね。