100万年ぶりに小説を読んだので、読書感想文のふりをした自分語りをします。自分語りなので読んで小説が楽しめなくなるようなものではないと思いますが、ガンガンにネタバレしていくので、読む予定がある且つネタバレが嫌いな人は読まないでください。
西加奈子の『おまじない』を読んだ。
読もうと思ったきっかけは、十六夜ポラリスの朝桜ももさんがインスタのストーリーズに載せてたから。学生の頃は小説ばっかり読んでたけど、社会人になってからはビジネス書以外ほぼ読まなくなっていたので、ちょうどなんか小説とか読んでみたいなと思ってた時期だった。久しぶりに小説を読もうと思ったので、短編集で読みやすそうなのもよかった。あと帯に長濱ねるさんのコメントが載っていたので、これは信頼できそうだと思って読むことにした。長濱ねるさんは頭がいいので。いきなり脱線するけど、なんか前は頭の良い女が好きってなんの躊躇いもなく言ってたんだけど、明日カノの「私を頭が良い女にすることで、一緒にいる自分のステータスが上がるんでしょ」っていう台詞を読んでから、なんか素直に言えない感じになってしまった。別に自分のステータスを上げたいとは思わないけど、自分もそれに近い部分は多少あるのかもしれないと思って、見透かされたようでめちゃくちゃドキッとした。本質的な台詞な気がする。とは言いつつよくその話をしてしまうので、この前もゆらねちゃんに「ゆらねちゃんは頭がいいから好き」って話したばっかりだし、朝桜ももさんも頭いいと思う。
西加奈子の小説は、前に『サラバ』を読もうとしたことがあった。オードリーの若林がめちゃくちゃおすすめしてたから。それが確か何年か前に付き合ってた人と別れた直後だったのだけど、その人から聞かされていた境遇と、登場人物の境遇があまりに似すぎていて、めちゃくちゃしんどくなって読むのをやめてしまった。今となってはあんまり覚えてないんだけど、たぶん母親との関係性が似てたんだと思う。
そして今回『おまじない』の短編のいくつかも、やっぱり母親との関係みたいなのを描いたのが多かった。ぜんぶ女の子が主人公の短編だから、自分は自分自身と重ね合わせることができないので、どうしてもいちばん近い女の子ということで、自分が付き合ってた人たちのことを思い出した。で、自分の付き合ってきた人たちもみんな、やっぱり母親との関係を悩んでる子が多かった。一人はシンプルに母親の過干渉が酷くてよく泣いてた(付き合ってる自分にまで飛び火したこともあった)。ママのことが好きって言ってた子も、ママの期待に応えなきゃと思ってめちゃくちゃプレッシャーを感じたことがある、みたいな話をされたことがあったのだけど、それも一人じゃなくて、2人から似たような話を聞いた。自分の好きなタイプが根暗で真面目で努力家なので、そういうところも関係してるのかもしれなけど。自分がそういうタイプの女の子が好きなのか、それとも世の女の子が普遍的にそうなのかわからないのだけど、母親との関係に悩んでる女の子は結構いて、そういう人のためにもこの小説はあるのかなっているのをすごい思った。
そんな感じで基本的には自分と重ならなかったんだけど、唯一重なった部分があって、それが「愛された人間特有の健やかさがあった」っていう一文だった。さっきの母親が過干渉だった女の人と付き合ってる時に、「どうせ親に愛されて育ったんでしょ」みたいなことを言われたことがあった(さすがにこんな酷い言い方じゃなかったと思うけど)。そしてここでまた明日カノの話になるのですが、明日カノにも「この人は親に大事にされ愛されながら育ったんだろう」っていう台詞があって、それを初めて読んだ時に「え、自分も言われたことあるんだけど」と思ってこれもまた衝撃を受けた。そしてこれも複数の物語で語られているということは、ある種普遍的なテーマなのかもしれない。
短編が8本収録されてるんだけど、その中では『孫係』という話がいちばんよかった(最後の対談を読むと長濱ねるさんもそう言っていた)。めちゃくちゃ品の良い完璧なおじいちゃんと思われていた人が、外で良い顔する分、実は家ではおばあちゃんにだけは他の人の悪態をついたり悪口や不満言っていて、その孫の女の子も、いろいろ大変だけど外向きには良い孫、良い娘、良い友達、良い生徒でいて、おじいちゃんにだけは不平不満を言おう、みたいな話だった。良い孫の係をするから、孫係。そしてそれは相手のことを思ってやってることだから、偽ってるのではなく、優しさであると。この話を読んで、ゆらねちゃんもそういうところがあるのかもしれないとすごい思った。ゆらねちゃんはアイドルとしての自分はこうだっていうのをめちゃくちゃ大切にしてるから、この話で言うところの「アイドル係」に近いのかもしれない。なんだけど、特典会とかで二人で喋ってる時は「ほんとは言いたくないんだけど」みたいなことを言ってくれたりもするから、そういうところも全く一緒で好きとなった。だからなんか、ゆらねちゃんにとって自分が、孫の女の子にとってのおじいちゃんみたいになれたらいいなとすごい思った。
おたくやってると意外なところで知識が増えたりするのですが、じゅじゅのおたくで最後に増えた知識が「おまじない」を漢字で書くと「お呪い」と書く、ということだった(走馬灯の歌詞)。そんなことが頭にありつつ読んでたら、タイトルは「おまじない」なんだけど、小説には「女の子らしい」とか「可愛い」とか「普通」とかいう言葉に囚われている女の子たちが描かれていて、これは「おまじない」じゃなくて「呪い」やなと思ってたら、最後の短編で「おまじないは呪ってないんや」的な台詞があって、なつきさんの伏線めちゃくちゃ回収されてるやんとなった。
あと最後に思ったんだけど、人生に悩むアラサーアラフォー男性にとっての『おまじない』みたいな本はないのでしょうか。前に『38歳、男性、独身』を読んだ時も書いたけど(8月15日。 - 私の毎日はラブコメ参照)、やっぱり自分に近い人物が主人公の話が読みたい。そういうのないでしょうか。知ってたら教えてください。でも結局いい本がなくて、みんな太宰とかに落ち着くんだろうな。